自国最強の騎士団長様は私が守ります。だって私、世界最強ですから!

 *

 それから数日後、屋敷が慌ただしくなる。

 どうしたのだろうかと廊下を歩いていると、グランツ様の執務室から出てきた令嬢の姿に息を呑んだ。

「ローズ様……」

「あら、あなたは……リリアーヌ様だったかしら?」

 そう言ってローズ様が私を見つめ、頭からつま先へと視線を移していく。そして下まで行った視線がまた上がってくると、ローズ様の赤い瞳と視線が混じり合う。驚きで動けない私にローズ様がクスリと笑った。

 グランツ様の部屋で一体何を?

 聞きたいが、どんな答えが返ってくるのか分からず、口を開くことも出来ない。

「クスクス……ではリリアーヌ様、私はこれで」

 一礼したローズ様が美しい所作でその場を去って行った。

 それをリリアーヌは見ていることしか出来なかった。

 


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