【短編】夏空よりも眩しいきみへ
「っ、あたっ、やばっ、きっ」
声にならない声で、頭を抱えていると。
「フハッ」
と彼女の毛先のように跳ねた、軽快な笑い声がした。
大勢の前でいる時は割と控えめなのに、2人きりになるとよく笑ってよくしゃべる。
昔から、自分にだけ特別な羽奈を見せてくれている気がして嬉しかったんだ。
「ちょ、何笑ってんの。羽奈が一気に食えとか言ったせいなんですけど」
頭を抱えながら彼女に視線を向けると、バチっと視線が絡んだ。
『羽奈』
久しぶりにその名を口にして緊張したのは、内緒だ。
それでも、思ったよりもだんだんと自然に話せているのが嬉しい。
あの頃に、戻ったみたい。
「ハハハッ、だって、菖、アイス溶けておっことして泣いたことあったじゃん。泣かれたら困ると思って」
「いつの話だよっ」
「フフッ、ねっ」
すごく楽しそうに、嬉しそうに笑うその姿は、やっぱり眩しくて。
目を逸らしてしまいそうになる。
でも、変わらないその笑顔を俺に向けてくれたのを見て、もう逸らさないって決めたから。
「……びっくりした、まさか、羽奈がいるとか」
「ね。私もめっちゃびっくりした!……でも、」
「……?」