【短編】夏空よりも眩しいきみへ

「明日、夏休み初日、どっか行く?2人で」

「えっ……」

「これでも、デートのお誘いなんだけど。昔よりも移動範囲広がったし、どこでも」

「っ、じゃあ、小学校の頃の通学路コースデート!」

「なんだそのムードの欠片もないやつ」

そんなツッコミに、羽奈が軽やかに笑う。

「ムードしかないじゃん!」

「ある意味な。じゃあそうしよう。よし、そろそろ明日に備えて早く帰って、寝ましょうか、羽奈さん」

そう言ってベンチから立ち上がって隣をみると、彼女が手を伸ばしていた。

「ん」

「フッ」

思い出す。
昔、羽奈がよくしていたこと。

彼女の正面に立ち、その手を掴んで引っ張ると、勢いよく俺の腕の中へとすっぽり入った。

ドキドキとなる胸の音を心地いいとさえ感じて、そのままギュッと抱きしめる。

「菖、大きくなったね」

「ん。力も強くなったから。もう離さないよ」

「それは、羽奈と離さないをかけていますか?ムードの欠片もないね」

「こっちのセリフなんだけど。そんなこといちいち言わなくてよくないですかね?」

顔を上げてこちらを見つめる彼女の頬を両手で包み込んで。

鼻先が触れそうなほど近づいて、我慢できずに笑い合う。

「だって、照れるじゃん」

「うん。好きだよ、羽奈」

「なっ……!」

幼なじみとの眩しすぎる夏が、はじまる。





【end】
< 17 / 17 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:7

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

となりの色気がうっとうしい
凩ちの/著

総文字数/11,035

恋愛(純愛)20ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「おはよう、月雨ちゃん。学校、一緒に行こう?」 なぜ。 突然、隣に住むお色気男子が、地味な私に絡んできました。 「記念に、手でも繋ぐ?」 は? ゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜゜ 真面目で曲がったことが 嫌いな女子高生 西木 月雨(ニシキ ツユ) × 学校一のお色気イケメン 天海 双葉(アマガイ フタバ) +.――゜+.――゜+.――゜゜+.――゜+.――゜ 「そんなに怒らないでよ。まあ怒った顔も可愛いけど」 お顔はすこぶる整っているけれど、 女の子にだらしがなくて、それなのに大人気。 そんな彼になぜか懐かれて、大迷惑。 「俺のこと、犬かなんかだと思ってる?」 「ちゃんと人間の雄だって意識してね」 ちょっと何言ってるのかわからない。 「月雨ちゃんの呆れ顔、俺のツボなんだよね」 そんなヘンタイなキミの色気なんかに絶対。 「じゃあ、その赤くなってる顔は何?」 うるさい。 ドキドキしたり、しないから。 「素直に言いなよ」 うっとうしい。
冷たい夜に、愛が降る
凩ちの/著

総文字数/19,049

恋愛(純愛)31ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「……帰りたくないなら、うちに来な」 そう言って、私の手を優しく握ったのは。 毎日のように、都会の巨大スクリーンに映し出される──ひんやり王子だった。 *・゜゜・*:.。..。.:*・゜・*:.。. .。.:*・゜゜・ 孤独な少女 香山 恋白(カヤマ コハク) × 大人気俳優 御田 菫(ミタ スミレ) **・゜゜・*:.。..。.:*:.。. .。.:*・*・゜゜・*:.。.. 「好きなように過ごして」 家にも外にも、居場所なんてどこにもないはずだった私に、突然できた、 新しい、帰る場所。 誰かを信じるのは、もうやめるはずだったのに。 「思いっきり泣きな」 そのまま引き寄せられた腕の中があまりにも暖かくて。 「俺が恋白といたいだけ」 「……してもいいなら、目つぶって」 この温もりを知ってしまったら、もう……。 「全部忘れるぐらい、俺が恋白を愛すから」
くすんだ青からログアウト
凩ちの/著

総文字数/68,839

青春・友情6ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「ねぇ、サラ。私、もうサラだけが友達でいい」 《ありがとう。私も色羽だけが大好き。色羽は何も悪くないよ。私はずっと色羽の味方だから。自分の気持ちを一番、大事にしてね》 スマホの画面に映る、私の〝親友〟は優しく微笑む。 私のためだけに作られた唯一無二の完璧な友達。 私が欲しい言葉だけをいつもかけてくれる。 顔色をうかがう必要も、本音を飲み込む必要も、裏切られることもない。 外の世界のトモダチなんて、もういらない。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop