【短編】夏空よりも眩しいきみへ
「明日、夏休み初日、どっか行く?2人で」
「えっ……」
「これでも、デートのお誘いなんだけど。昔よりも移動範囲広がったし、どこでも」
「っ、じゃあ、小学校の頃の通学路コースデート!」
「なんだそのムードの欠片もないやつ」
そんなツッコミに、羽奈が軽やかに笑う。
「ムードしかないじゃん!」
「ある意味な。じゃあそうしよう。よし、そろそろ明日に備えて早く帰って、寝ましょうか、羽奈さん」
そう言ってベンチから立ち上がって隣をみると、彼女が手を伸ばしていた。
「ん」
「フッ」
思い出す。
昔、羽奈がよくしていたこと。
彼女の正面に立ち、その手を掴んで引っ張ると、勢いよく俺の腕の中へとすっぽり入った。
ドキドキとなる胸の音を心地いいとさえ感じて、そのままギュッと抱きしめる。
「菖、大きくなったね」
「ん。力も強くなったから。もう離さないよ」
「それは、羽奈と離さないをかけていますか?ムードの欠片もないね」
「こっちのセリフなんだけど。そんなこといちいち言わなくてよくないですかね?」
顔を上げてこちらを見つめる彼女の頬を両手で包み込んで。
鼻先が触れそうなほど近づいて、我慢できずに笑い合う。
「だって、照れるじゃん」
「うん。好きだよ、羽奈」
「なっ……!」
幼なじみとの眩しすぎる夏が、はじまる。
【end】


