聖母のマリ子
 大司教と相談しながら『桃の聖典』を作成し始めて間もなく、私はエドとの第2子となる王子を出産した。今回も妊娠してから3ヶ月で出産に至り、母子共に健康。

 リリィは髪が薄茶で肌色も私に近いが、それ以外はエドにそっくりの美人さん。『マルティノ』と名付けられた王子はその逆で、髪も目も肌も色は完全にエドで顔が日本人。銀髪と青い目の日本人顔に多少違和感はあるが、新生児とは思えないキリッとした印象のイケメン君だ。

 王族が死に至る時、浄化されなかった呪いは消えることなくグレゴリオの血を求め、その子孫へと受け継がれる。その血が途絶えれば、行き場を失った呪いは国民に直接ふりかかり、増幅を開始するという。そうなれば呪いが無限に広がり始め、浄化はほぼ不可能となるだろう。

 故に、グレゴリオの血を確実に繋いでいくこともまた、重要な私の使命なのである。

 これに関しては複雑な感情が入り交じる。

 こんなにもかわいらしい私の子供達は呪われた血を受け継いでおり、この小さな体の中でそれを増幅させているのだ。

 腕の中で微かな寝息をたてているマルティノを、私は優しく包み込むように抱き締めた。

 恐らくエドの代で呪いを浄化しきることはできないだろう。きっとこの子にも同じ苦労を強いることになる。ならばせめて、少しでも負荷を減らしてあげたい。それがこの子達の母として私ができることなんだと思う。

 産後間もないとはいえ、前回同様魔法のおかげでダメージは少ない。今やれることは惜しまずにやらなくては‥‥

「ジュリア、また大司教様に時間を取ってもらえるようお願いしてもらえる?」

「かしこまりました。‥‥ですが、あまりご無理はなさらないで下さいませ」

 ジュリアは本当顔に似合わず心配性だ。これが噂の『ギャップ萌え』ってやつなのか?

 そんなことを考えていたところに、仕事を抜けてきたらしいエドがやってきた。

「マリコ、様子をみにきたよ。ああ、顔色はいいみたいだな。唇の色も悪くない‥‥」

 そう言いながら頬を撫でていた指を唇へと移動させ、一瞬でピンクオーラを撒き散らし、周囲に人がいようとお構いなしに私の唇を貪り始めた‥‥彼を止められるのは鋼の側近ジェラルドだけだが、今彼はいない。私も侍女達もこの状態に慣れ始めている気がするのは勘違いだろうか?

 だがしかし、口付けもまた呪いの浄化となるのだ。エドが私への執着を強めるのは、浄化が進んでいる何よりもの証拠‥‥そう思うと恥ずかしさよりも嬉しさが勝る。

 神様の言う通り、私には重過ぎるくらいの愛情が丁度良かったのかもしれない。
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