聖母のマリ子
「少子化の原因は呪いだった‥‥大司教様はそのこと知ってたんですよね?」

「‥‥?」

 さすがは腹黒。大司教は私が放った先制攻撃にも動じることなく、『呪い?何それ、美味しいの?』と言わんばかりのすっとぼけ顔をかましてきやがった。残念ながら全然かわいくないし時間の無駄、そういうの本当いらないから。

「神様が夢に出てきて全部教えてくれたからもう駆け引きはいりませんよ?」

 『神』というパワーワードのせいなのか大司教から表情が消え、しばし沈黙が続く。きっとこの無表情が彼の素なのだろう。なんとも言えない恐怖を感じるが、何やら思考している様子なので黙ってそれを見守った。

「‥‥全部、とは?」

「この呪いに関わること全部ですよ。多分大司教様が把握してないことも全部。私はそれをあなたに隠すつもりはない。だから大司教様も余計なことを考える必要はないし、ここからはどうしたら呪いを浄化できるかだけに集中して欲しいんです。でないと、この世界はいつか本当に滅亡してしまいますよ?それは大司教様も望んでないんですよね?」

「‥‥私も正直どこまでマリコ様にお伝えすべきか迷いはあったのです。どこまでが許されてどこまでが許されないのか、私の一存では判断しきれず‥‥これまでの非礼をお詫びしたい。本当に申し訳ありませんでした」

「そこも含めてわかってるつもりだから、これから呪いの浄化に協力してくれるなら何も問題ないですよ」

 私が夢でみた呪いと桃の属性について知ってることを包み隠さず全て話すと、大司教は一番の懸念点である呪いの存在をどう扱うかに関して慎重な姿勢をみせた。

 悪戯に不安を煽るのは得策ではないが、危機感がなさ過ぎたことで桃の属性が消滅したことも確かな事実である。

 呪いの浄化にどれだけ時間を要するのかがわからない限り、桃の属性を持つ者の消滅は絶対にあってはならない。同じ失敗を繰り返さないためにも、絶妙なバランスをとり続けることが求められるのだ。

「呪いという不都合な部分はぼやかしつつも多少の危機感は持たせ、尚且つ桃の属性を保護しなければならないとする啓示‥‥それをマリコ様が神から受けたことに致しましょうか」

「うんうん、それいいかも。神様からの教訓?戒め?みたいな感じで国民に広く普及させるために、聖書的なものを作ってみる?」

「そちらのマリコ様の夢日記、翻訳して頂ければ広めても問題のない内容にうまくまとめられるかと‥‥」

 誤魔化すことに関して大司教の右に出る者はいない。彼を味方にしたのは大正解である。
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