復讐は蜜の味 ~悪女と言われた公爵令嬢が、幸せを掴むまで~
 考え込んでいると、ピエールが話を続いた。

「閣下が帰るまでと先延ばししていますが、皇帝からは矢の催促で」

 アレクサンドは鼻を鳴らす。

(なにに使うつもりだ)

 魔獣の心臓には核となる石があり、強力な魔力を持っているゆえ魔石と呼ばれた。

 魔石があればマナの力を倍増できるし、魔法具を作れる。

 強い魔獣ほど魔石のパワーは強く、宝石以上に高額で取引されるのだ。

 魔獣の山に囲まれている大公領はある意味、帝国で最大の魔石の産地ともいえる。だが並大抵では魔獣は倒せない。

 皇帝の名をもってしても渡せと〝命令〟できないのは、アレクサンドでなければこの地を治められないとわかっているからだ。

「治療師たちが魔石不足で困っていると、もっともらしい理由をいうんですがね」

「こざかしい」

 アレクサンドは羽ペンを取り、さらりとひと言だけ書いて封をした。

「これをディートリヒに」

 ピエールは怪訝そうに首を傾げた。

「いったいなんと書かれたのです? ずいぶん短いようですが」

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