溺愛社長の2度目の恋
第7話 なんで好きになったんだろ
檜垣さんが有史さんに私をくれと言ってから、半月ほどが過ぎた。

「先に食べてていいからね」

朝食の準備をし、今日も有史さんが深里さんのところへと食事を運ぶ。

「……あれ、いつまでやるんだろ」

ふと漏らした自分の言葉にはっとした。
私はいったい、なにを言っているんだろう。
有史さんは死ぬまで、深里さんを愛し続ける。
そうに決まっているのに。

「今日も待ってたのかい?」

「ああ、はい」

少しして、戻ってきた彼が私の前に座る。

「ごめんね、いつも待たせて。
じゃあ、食べようか」

「はい、いただきます」

もう日課のようになった会話をし、朝食を食べる。
この会話をするのは、あと何回なんだろう?
ううん、私はずっと、有史さんの純愛を守ると決めたではないか。

仕事は何事もなく進んでいく。

「夏音さーん、ちょっと相談、いいですか?」

「はーい、大丈夫だよ」

磯田くんから声をかけられ、そちらに椅子を向ける。

「これなんすっけど……」

彼はここでは私の先輩になるが、仕事歴では私のほうが先輩になる。
ここに入って少したった頃、私の実績を知られて尊敬されるようになった。

『えっ、あのシュケットゥのデザインしたんすか!?
オレ、このあいだ行ってきたっす!
あんな凄いデザインができるなんて、マジリスペクトっす!』
< 96 / 184 >

この作品をシェア

pagetop