誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
蓮が伴奏を弾き終えて軽く会釈をする。

CMに入るその瞬間、普段感情を表に出さない彼が、カメラ目線でふわっと笑った。

心菜の心臓はドキンと高鳴る。

いや多分、これを観ていた全ての女性がきっと同じように心臓を高鳴らせた事だろう。

蓮の歌声は魔力のようにしばらく頭に鳴り響いた。

ゲート案内のアナウンスの声が遠くに聞こえ、心菜はボーっとした頭でその人々の列に並ぶ。

ざわざわと聞こえてくるのは、先ほどの蓮についての賛美の声。

ああ、良かった。と、心菜は自分の事のように思い、ホッとした気持ちで飛行機に乗り込んだ。

飛び立つ瞬間、どうしようも無く今まで堪えていた感情が押し寄せ独り涙する。

機内は乗客が少なく隣の席に人は居ない。

気が済むまで泣き続けた。

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