誰にも言えない秘密の恋をしました       (君にこの唄を捧ぐ)
その後、毎日の日課である作業療法士や理学療法士、看護師長までが仕事をこなしにやって来る事になる。

心菜は体を横たえると既に、寝不足で頭が回らず、何一つ抵抗する事が出来なくて、何よりも眠気には勝てずそのまま眠りに落ちてしまった。

「こんにちは。今日もよろしくお願いします。」
爽やかな笑顔と共に蓮の病室を訪れたのは、
作業療法士の高橋啓太だった。

当初から、やたらと心菜との仲をアピールして来るから、付き合ってるのかと勘繰ったが、心菜からの話しでは知り合いの域でしかない事を知り安堵した。

この爽やかな笑顔が胡散臭いと蓮は思う。

「どうも。サッサと終わらせて下さい。」

笑顔一つ見せずに蓮は言う。

右手の機能回復の為、手先を使ったストレッチや訓練をするのだが、毎日同じ事の繰り返しに飽き飽きしていた。

確かに、以前よりは強張りがある。しかしまったく動か無い訳では無い。

蓮の場合は元々普段から鍛えていた事もあり、他人よりは筋肉量が多く、回復時間も短く済むと聞いている。

「では、早速やって行きますか。」
リハビリに必要な器具等を並べ終え、啓太が何気にソファを見やる。

「あっ、どなたか寝てらっしゃったんですね。すいません気が付かなくて…時間ずらしましょうか?」

「いや、大丈夫だ、心菜だから。」

「えっ⁉︎ここちゃん⁉︎何で⁉︎」
驚きの余り啓太が素になる。
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