仮面夫婦を望んだ冷徹な若社長は妻にだけ惚けるような愛を注ぐ。【逃亡不可避な溺愛シリーズ1】
 そうは思うが、いつまでも項垂れてなんていられない。

 そっと視線を上げれば、目の前にはとても美しい男性――敦也がいる。

(っていうか、紹介役ってどういうこと……?)

 先ほどの麗美の態度や言動を考えるに、まるで敦也が芽惟を紹介してほしいと言ったようだ。

(いやいやいや、それはないない……)

 元を言えば、敦也と芽惟は初対面だ。今まで会ったこともなければ、芽惟は彼のことをよく認識していなかった。

 それほどの関係。薄くて、今にもちぎれてしまいそうな。いや、元から関係なんてなかったのだ。

 誤魔化すようにカフェモカを口に運んで、心を落ち着けようとする。しかし、全く落ち着かない。

(そもそも、こんな美形が目の前にいて、落ち着けるわけがないでしょう……!)

 ちらりと敦也を見つめる。彼の長いまつげが、揺れている。なにかを考え込むような姿は、とても魅力的だった。

「……かっこいい、かも」

 自然と口からそんな言葉が零れた。

 けれど、すぐにハッとして首を横に振る。ぶんぶんと首を横に振っていれば、敦也が芽惟を見つめる。

「芽惟さん」
「……あ、はい」

 こくんと首を縦に振る。敦也が、そっと頬杖を突く。その姿がとても魅力的で、イケメンの類に興味の薄い芽惟でさえ、見惚れてしまいそうになる。

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