仮面夫婦を望んだ冷徹な若社長は妻にだけ惚けるような愛を注ぐ。【逃亡不可避な溺愛シリーズ1】
「あんまりなかったので、パスタにしてきました。ミートソースとナポリタン、どっちがいいですか?」

 ダイニングテーブルの上にパスタを出しつつ、芽惟はそう問いかける。敦也はソファーに腰掛けており、どうやら少し休憩しているらしかった。

「どっちでも。芽惟さんが先に選んでください」

 彼が端的にそう声をかけて、あくびを噛み殺していた。……もしかしたら、眠たいのかもしれない。

「じゃあ、私、ミートソースもらいますね。温めてもらっているので、出来るだけ早くに食べてください」

 それだけ言って、芽惟は椅子に腰かける。つけてもらったフォークを開けて、入れ物のふたも開けた。

「いただきまーす」

 小さくそれだけ呟いて、芽惟はパスタを口に運ぶ。

 大手コンビニのパスタということもあり、食べなれた味だ。

(なんていうか、こんな非日常の中にこういうのがあると、落ち着くわよね……)

 心の中でそう唱えて、芽惟は室内を見渡す。綺麗なリビング。部屋の窓からは、美しい景色が見えた。……うん、非日常にもほどがある。

 合わせ、荷解きで相当体力を使っていたらしい。パスタをさっさと食べてしまい、芽惟は「ふぅ」と息を吐いた。

「……もう、食べ終わったんですか?」
「あ、はい」

 芽惟が食べ終わったのを見計らったように、敦也が立ち上がってこちらに来る。

 ……もう少し、ゆっくりと食べるべきだっただろうか?

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