仮面夫婦を望んだ冷徹な若社長は妻にだけ惚けるような愛を注ぐ。【逃亡不可避な溺愛シリーズ1】
「そうですか。でしたら、よかったです。それにしても、早起きですね」

 彼は芽惟に視線を向けることはなく、延々とタイピングをしながら声をかけてくる。

 ……もしかしたら、彼は気を遣ってくれているのかもしれない。そう、思ってしまった。

「いえ、私はいつもこの時間に起きるので……」
「へぇ」

 その相槌は、興味があるのかないのか。上手く判別できないようなもの。

 それでもまぁ、返事をくれるだけいいだろう。芽惟はそう思って、ダイニングテーブルのほうに近づいていく。

 敦也の近くには、マグカップに入ったコーヒーがある。砂糖はわからないが、ミルクは入っていないようだ。

「あの、私もコーヒー、いただいてもよろしいでしょうか?」

 一応とばかりに確認すれば、敦也は「どうぞ」と言ってくれる。

「そこの戸棚にインスタントならありますので」
「そうなのですね」

 指定された戸棚を開ける。

 そこあったのは、コーヒーの粉だけではなかった。

(紅茶のものもあるし、カフェオレもあるのね。……あ、ココアとかもある)

 よくスーパーとかで売っている、一杯分に個包装されたものがずらりと並んでいた。

 芽惟は、少し迷った末にカフェオレの粉を取る。そのままマグカップにいれ、そこにポットからお湯を注いだ。
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