仮面夫婦を望んだ冷徹な若社長は妻にだけ惚けるような愛を注ぐ。【逃亡不可避な溺愛シリーズ1】
 しばらくして。

 芽惟は食卓用のダイニングテーブルの上に、作った朝食を並べた。

 とはいっても、大したものではない。まだ食材がそれほどない以上、それっぽいものを作ることが出来なかった。

 きれいな白色の皿の上に載っているのは、スクランブルエッグ。それから、カットしたトマト。もう一つの皿には、トーストした食パンを一枚。

「明日からは、もう少しマシなものを作りますね」
「……はぁ」

 芽惟の言葉に、敦也が曖昧に頷いた。

 けど、それには気が付かないふりをして、芽惟はカップに入ったカフェオレを口に運ぶ。

 ……ちょっと冷めているけれど、やっぱり美味しい。

「……いただきます」

 敦也が律儀にも頭を下げて、そう言ってくる。そのまま流れ作業でフォークを手に取って、スクランブルエッグを口に運んだ。

 ケチャップの少しだけかかったそれは、芽惟が大好きな焼き加減だ。火を通し過ぎずに、色合いはきれいな黄色のまま。ふわっとした食感は、家族に割と好評だった。

「どう、でしょうか?」

 きょとんと小首をかしげて、敦也にそう問いかけてみる。

 彼は数回咀嚼して、呑み込む。少し緊張した表情を浮かべていれば、敦也はフォークを置いた。

「……そうですね。まぁ、美味しいほうかと」
「よかったです」

 回りくどいが、結局美味しいということなのだろう。

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