仮面夫婦を望んだ冷徹な若社長は妻にだけ惚けるような愛を注ぐ。【逃亡不可避な溺愛シリーズ1】
「そういやさ、話は変わるんだけれど、この間うちの雑誌でやり手の若手社長を特集することになったのよ」
「へぇ」

 その話題には微塵も興味が出ないけれど、麗美の仕事には興味がある。

 麗美は大手の出版社で雑誌の編集者をしている。彼女は仕事は大変だけれどやりがいがあると言っていた。ついでに、人脈を作ることにも役に立つと。

「それでね、編集長ったら、私に無茶ぶりするのよ」
「……無茶ぶりって?」
「初回はせっかくだしイケメンを特集しようって」
「……なんだか、現金ね」

 芽惟にはそれしか言えなかった。確かに麗美が編集をしている雑誌は、女性向けだ。つまり、イケメンを特集すればそれだけ購買意欲が上がるというのも、わかるのだが。

「それで、一応名前が挙がったのが……市原ホールディングスの、敦也社長なんだけれど」
「……市原ホールディングスの敦也社長……誰?」
「あんた、本当に疎いね」
「いや、市原ホールディングスくらいは、知ってる」

 一応そう弁解をすれば、麗美は「そっち?」と言って笑った。
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