淡い秘め事
大切な時間 兄side

妹のことが好きだと気づいたのは、中学生の頃だった。
本当はもっと前から『好き」という感情はあったけど、それが恋愛感情としての『好き』だと自覚するには時間がかかった。

妹のことが好きだと気づいた頃、俺は自分を責めた。
実の妹にこんな感情を抱くなんて、なんて汚い人間なんだろうと思った。

そんな後ろめたさに包まれた日々を送っていたある日、思いもよらない言葉を両親から聞いた。




「ずっと話していなかったことなんだけど…実は遥斗(はると)結愛(ゆあ)は、本当の兄弟じゃないんだ」


結愛(ゆあ)には、まだ話してないから、もう少し大きくなってから話そうと思ってるの」

父さんと母さんの気まずそうな顔を今でも鮮明に覚えている。
二人の衝撃的な告白にはびっくりしたけれど、それと同時に俺の後ろめたさを綺麗に消し去って行った。










両親が亡くなったのは、妹と血の繋がりがないと告白された頃だった。
突然の交通事故だった。

当時、中学生だった結愛は精神的に不安定になっていた。

夜になると不安定になる結愛を毎晩、必死で抱きしめた。
俺自身も、結愛を支えながら生活することでいっぱいいっぱいだ。


援助もあり、食べることや基本的な生活を送ることに苦労することはなかったが、結愛の進学などを考えると、金銭的な不安は消えない。



高校を卒業すると同時に俺はホストの仕事を始めた。

結愛には、「お兄ちゃんがホストするなら高校と大学は行かない!」と大反対された。
確かに、不安定な結愛を夜に一人残して仕事に行くのは気が引けたが、結愛が苦労しないで済むのなら、俺が稼ぐしかない。



店でうまくやっていけるか不安だったが、店内でトップ5入りという好成績を収めた。
店長からは、「お酒が飲めないでこの成績なら、将来有望だな」と期待されている。

大学生活をしながら、店外でのお客さんとの付き合いもあり、忙しい毎日だ。
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