アラフィフママを溺愛するのは植物男子でした

8・植物男子の存在意義(郡山視点)

 僕は……。

 僕は……。

 僕は、一体何をやっているんだ!?

 見た目50代のおっさん植物を抱えて!
 好きな人の家から逃げるように出てきて!
 得体の知れないこいつを助手席に座らせて!

 本当に、何をやっているんだ?
 だけどこいつを、ミノを一刻も早く先輩から引き離したかった。
 追いかけてくるかと思ったが、その様子もないようだ。

 運転席に滑り込むように乗り、少し乱暴に車のドアを閉めた。
 出発しようとするが、どこへ行こうと言うのだろうか?
 自分の家に連れ帰る? はっ、バカバカしい。
 誰が好き好んでこんなやつを──。
 頭痛がしそうで、こめかみを押さえた。

 自分がこんなに嫌な人間だったなんて。
 ハンドルに手を置き、大きくため息をついた。

(わたる)さん」
「気安く呼ぶんじゃない」

 低く、耳に心地よい声で呼ばれて、驚きと苛立ちが胸の内で渦巻いた。

「では、なんとお呼びすれば?」
「そうだなぁ……。航さま(・・)?」
「わかりました、航さま」

 AIかよ……と突っ込みたくなるほどに、ミノは従順だった。
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