アラフィフママを溺愛するのは植物男子でした

10・契約結婚

「ミノを返す前に、お話があります」
「なんでしょう?」

 週末、私は郡山くんの家に来ていた。ミノを返してもらうためだ。
 独身男性の部屋らしく、ワンルームにキッチンという簡素な部屋だった。
 その部屋に置かれた、これまた簡素な折りたたみ式のテーブルに、私たちは向かい合って正座で座っていた。

「先輩は、ミノのことが好きなんですか? それとも、ミノの癒しの力が欲しいんですか?」
「それは……」

 正直、好きかどうかと問われると自信がない。
 でも癒しの力だけ欲しいかと言われると、そうでもない。
 ただ、ミノにそばにいてほしい。
 この数日、寂しくて心が凍えそうだった。
 仕事が忙しかったから、そちらに集中してこの一週間なんとか持ち堪えられた。
 私は、その気持ちをまっすぐに郡山くんと、その後ろにいるミノに伝えた。

「結衣子さん……」

 ミノは、嬉しそうに微笑んだ。

「先輩の気持ちはわかりました。でも、ミノの主人は僕でもあります」
「わかってるわ」

 すんなり返してくれないところをみると、やっぱり郡山くんもミノの力が欲しいのね……。
 わかる、わかるわ。この年齢になると、月曜日が辛いものね……。
 
「でもそうすると、毎週交代でミノを連れて帰ることになるのかしら……?」

 それも大変だけど……。

「そんな面倒なことしなくても、いい方法がありますよ」
「えっ?」
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