アラフィフママを溺愛するのは植物男子でした
 ノンセクシャルとは。
 他人に対して恋愛感情は抱くが、性的欲求がない人のこと。

 私と郡山くんはミノを背にして座り、スマホの画面を開いて説明してくれた。
 うん、これならミノも見られるし、わかりやすいわね。

「そうなんだ……。そういう人もいるのね」
「はい、なのでその問題はクリアーかと。あ、先輩が魅力的な人なのは本当ですよ。人間として、ね」

 郡山くんは、私の肩まである髪に触れて言った。

「だから、ミノと僕は似てるのかなと思ったんですが……。ちょっと違うみたいですね」
「俺は、結衣子さんが望めばどんなことでも」
「わああああ、望まない望まない!」
「僕は、もし先輩が望んでもそういうことはできません。僕がずっと独身なのは、そういった理由もありまして」

 なんとなく、郡山くんの表情が寂しそうで、思わずギュッと抱きしめてしまった。
 ミノと一緒に。

「あ、あっ、ごめん! こういうのは好きじゃないんだよね!?」

 ついさっき、性的なことは望んでいないって言っていたばかりなのに!
 慌てて郡山くんから離れた。

「すみません、俺も。航さんが辛そうに見えたので」
「あ、いや……。僕は抱きしめるのは大丈夫です。でも、そうか僕は……辛かったんだな……」

 郡山くんは、独り言のようにポツリと言った。
 きっと、今まで理解者がいなかったんだ(・・・・・・・・・・・)
 私だって、もっと若くて子どももいなかったら、郡山くんを受け入れられなかったかもしれない。そう思うと、郡山くんはどれだけ孤独を感じていたのだろうと、思わずにはいられなかった。
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