Fortunate Link―ツキの守り手―
第6話:ツキヨミの巫女





その光景を目にして、これは夢なのだと分かった。

目線が今よりうんと低い。
これは幼い頃の記憶なのだろうか…。

辺りを見回す。

青く生い茂った木々。
蝉の声がわんわんと天高くまで響き、耳の奥に残響がまとわりつく。
季節は真夏。

じりじりと照りつける太陽の下、白銀の長い髪が陽光に煌めいてた。

「――ねぇ、冴月(サエヅキ)。
なんでそんなところに居るの。こっちにおいでよ」

広い日本家屋の縁側。

小さな体をした自分がなぜだかそこに立っていて、庭に立つその白銀の髪の女性に声を掛けていた。

その女の人の名前は冴月というらしい。

冴月は不思議な色の光を宿す金色の瞳をしていた。


「すいかがあるんだよ。一緒に食べようよ」

そう声を掛けるも、冴月というその人は首を横に振った。

「いえ、私はここでいいのです」

「…えーっ。なんで?」

「ここに居て、貴方様方を見守ることこそ私の役目と心得ております」

抑揚に乏しい声でそう答えてくる。

が、俺は首を傾げた。

「うーん。でもそこに居て暑くない?」

「いいえ。心頭滅却すれば火もまた涼し、なのです」

冴月は頑固にそう言い張って動こうとしない。

「――冴月」

俺の居る背後。縁側の奥の部屋の中から人が現れた。

振り返る。

そこに立つ人物を確認し、俺は「あ」と声を上げ、走り寄ってその足元に抱きついた。

そして――、

「――父上ー」

嬉しそうに、幼い俺は確かにそう呼んだのだ…。

そしてその大きく暖かな手が優しく俺の頭を撫でた。

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