Fortunate Link―ツキの守り手―
「――アカツキ」
見つめていると、その全てに吸い込まれそうになる。
思考が滞る。
表面を覆っていた熱が内へとなだれ込む。
アカツキはぼんやりとこちらを見ていた。
力の抜けた顔をしていた。
おい。さっきまでの睨みはどこにいったんだ。
何でなんだ。何でこんな時に限ってそんなに無防備なんだ。
そんなアカツキを見ていると無性に胸の奥が疼いて。
体を侵す熱が頭の中までも融かして…。
これでは……、
どうにかなりそう。じゃなくて本気でどうにかなってしまう。
脳の制御が効かない。
手を伸ばす。アカツキへと。
意識を離れて勝手に動く。
その顎に触れて、頬を伝って。
そして自分の顔を近づけていく。
確かめたい。
この気持ちを、確かめたいと、思ってしまう。
殴られてもいいとさえ思った。
賭けだ。
アカツキの顔がすぐそこにあった。
薄く目を閉じていた。
何だよ、それ。
もう止められない。
互いの吐息がかかる。
――近づく距離は、ゼロに、なった。
その時。
ヒュゥゥゥゥゥ―パァンッ
何とも間の抜けた音がその場に割り込んだ。
その音が全てをぶっ潰した。
その音が全てを現実へと帰し、何もかもが中断。
思わず慌てて近づけていた顔を離した。
音のした窓のほうを見る。
「……ロケット花火?!」
どことなく騒がしい外を見て、呟く。
このしょっぼい音は何度も聞いたことがある。
小さい頃、夏休みによく飛ばした。
調子に乗って何本も飛ばしたことがある。いっぱい飛ばしたら打ち上げ花火みたいになんないかな、とか思って。
懐かしい音だ。
「後夜祭か――」
アカツキも同じ方を見ながら呟いた。