Fortunate Link―ツキの守り手―


「…あのなぁ。危険な目に遭うとかそんなの俺にとっちゃどうでもいいんだよ」

「何、言ってんだ…」

アカツキは睨んでくるが、いつものような凄みは無い。

いつもと違う寂しい色がその目の奥に在って…。

その目を見ていると、心の奥の芯がとろけて、理性が吹っ飛びそうになって、どうにかなりそうになる。


ああ…。何で…。

何でそんな悲しそうな目をするんだよ。

何でアカツキが沈んでるんだ。

おかしいじゃないか。

アカツキはツキを持っているのに。

ラッキーな筈なのに。

ツキは幸運なものじゃないのか?

そうじゃなかったのか?

そうじゃないってどこかの誰かが言ってたっけ。



どうにかなりそうな意識の中、アカツキを見つめる。


「――『守る』って言ったろ」

あの時言った言葉に嘘はない。

でもあの時とはまた違う気持ちで強くそう思う。


「その為なら何だってする。そのせいで危険な目に遭うのだとしてもお前のせいなんかじゃない。俺が”そうしたい”と望んだ結果だ」


そうだよ。

最初からそう決めてるんだ。

心に決めてることなんだ。

だからアカツキが気に病む必要なんて何もない。



「これは――俺の意思なんだから」




言ってみてから急に顔が熱くなってきた。

何か俺、今、めちゃくちゃ恥ずかしい事を恥ずかしげもなく言っちゃったよーな。

――『守る』って。その為なら何だってするって。

顔が熱い。火が噴いてるんじゃないかと思うぐらい熱い。

頭の上にヤカンを乗せば湯が沸きそうだ。


「何だよ…それ…」


アカツキは責めるような目で俺を見る。


睨んでくる。

本当に睨んでばっかりだな、お前は。

たまには違う表情をしてみろ。

ああ、そうだ。

たまに見せてくれる笑顔とか見てみたいよな。

笑って欲しいな。

その表情を曇らせる、悲しませるその全てを消し去ってやりたい。

本気で、そう思ってしまえる。

心からそう思える。

思いながら気づく。


……そうか。

これが「守りたい」って気持ちなのかもしれない。
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