Fortunate Link―ツキの守り手―
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それからしばらくして、俺は、内定が決定した会社の内定者懇親会に呼ばれた。
新しいスーツに身を包み、案内状の場所へと出向いた。
そこは、とあるホテルの中華レストラン。
店員に声をかけると、奥の方へと案内された。
案内された回転テーブルを見て、俺は首を傾げた。
そこにいたのはまだ小学生ぐらいかと思える小柄な女の子だった。
しかし、その小柄な身の丈に合わせた小さなスーツをきっちり着ていた。
「どうぞ、座って」
彼女は自分の向かいを指して、俺に言った。
なんで上から目線やねん、と思いながら、俺は仕方なく椅子に腰を下ろした。
「まずはおめでとう、と言うべきなのかしらね」
彼女は大人の女性の口調でそう言った。
「あの…」
俺は戸惑いを隠せず言った。
「今日は内定者懇親会と聞いて来たんやけど…」
すると彼女はふっと笑った。
「内定が決定したのは、あなた一人のみよ」
組んだ手の上に顎を乗せ、あどけなさとは程遠い理知的な瞳で俺を見据えてきた。
「ただし、あなたの受けたユニバーサル銀行ではない」
「え?」
「あなたは私の護衛として働いてもらう」
彼女は不敵な笑みを浮かべて、俺に告げた。
「…はぁ?」
俺は思いっきり眉を顰めた。
「どこでそんな質の悪いイタズラ覚えてきたんか知らんけど、ここは子供が来るような場所ちゃうで」
そう言っても、彼女は余裕然とした笑みを消さない。
「残念ながら、私はあなたの思っているような無力な小娘ではないの。
私は水波雅(ミツハミヤビ)。水波(ミツハ)家の当主。
あなたには私の護衛として働いてもらう。そう、この私が決めたの」