Fortunate Link―ツキの守り手―

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それから四年間。

俺はイギリスの大学に留学し、経済のことを中心に様々なことを学んだ。
16年間任侠の世界しか知らなかった俺にとって、その全てが刺激的で新鮮だった。

とはいえ、時間は限られている。
四年という期限を決めた以上、それを守ると心に決めていた。
寝る間も惜しみ、勉強、研究に明け暮れる毎日だった。

そしてその努力のかいあってか、学士号、修士号を取得し、論文も幾つかの雑誌に掲載された。
まだまだやり続けたい気持ちもあったが、俺は帰国の途につくことを決めた。

日本に戻った俺は、瀬川組拠点の家に帰り、そこから就職活動を始めた。

大手金融機関に的を絞り、スムーズに最終面接まで進み、無事に内定を勝ち取った。

そのことを、まず組員達に報告した。

彼らは「おめでとう」と言ってくれたが、どこか戸惑いの表情だった。
そしてそのうちの一人が俺に訊いてきた。

「若。それは大変すごいことだと思うのですが…。
その、大丈夫なのですか?」

「ん?何が?」

「その…やっぱり…、この組のことを隠して入社されるのでしょう?もしもバレてしまったら…」

「大丈夫やて。
絶対にそんなヘマはせえへん」

「しかし…」

「瀬川組は構成員の数も少なく、まだまだ弱小や。いつどこの組に吸収されるかわからへん。
だから組を盤石なものにするために、俺が他の暴力団への融資を防いで、うちに有利な方向へ稼業を広げていく必要がある」

「は、はぁ…」

組員は今一つ納得していない様子だった。

彼らの不安を払拭するには、俺が行動で示していくしかないだろう。
この世界では当然のことである。

俺は立ち上がり、その場に居る者達を見回し、告げた。



「――大丈夫や。
俺が、絶対に、この組を守っていく」




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