Fortunate Link―ツキの守り手―






「さぁーて、船も動き出したことだし」

白石さんは俺の方を振り返り、

「思いっきり船旅を楽しもう」

手を差し出してくる。


「……えっ?」

「ほら。ぼーっとしてないで」

手を掴まれ、引いていかれる。


「映画見る?ショッピングする?」

「いや、あの…」

「あっ、スポーツジムやフィットネスセンターもあるよ」

「海の上でわざわざ体を鍛えたい気持ちが分からんわ」

「ロッククライミングもあるよ」

見るとデッキ後方に壁がそそり立っている。

「それこそ山でやれ」

やはりセレブリティの考えることは分からん。

「あっ、温泉もあるんだよ。
私が乗るときには、私のお気に入りの温泉の源泉を運んで貰ってるの」

「……どうやって運んでんだ…」

「確か船を並走させて入れて貰ってるとか」

「なんでもありだな…」

呆れるを通り越して、いっそ感心してしまう。

「でもやっぱり、客船と言えば、外でプールでバカンスよねー!」

屋外プールとその脇に並ぶデッキチェアを指差し、意気揚々と言い放った。

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