水の国の王子様は従者を溺愛中!



カイ王子様が気さくだったからまたすぐに会えるかと思ったけれど、この頃アクアヴェールの王族の女子供は隣国である雷のフォースを持つ王族が治めているライマーレ王国へ無理矢理連れ去られる事件が起きていて、それを避ける為アクアヴェールの王族は国内でもほとんど姿を見せる事はなかった。


子供の頃たまたま一度お会いしただけだけど、私はカイ王子様の虜になっていて見られる機会があれば必ずカイ王子様を見に出掛けた。


学校も王族が通うハイレベルの学校へ猛勉強をして入学した。
入学の条件は入学試験がハイレベルな上に貴族かお城と関わりのある家の子供しか入れず、うちはお城の専属の花屋という事でギリギリ入学する事が出来た。


それでも考えは甘く、同じ学校に通っていても遠目に見える時があるくらいでお会い出来ることはなく、あっという間に卒業の日が近付いていた。


「はぁ……カイ様…今日も美しい…」

「ん?え?カイ様何処に見えるの?」

「向かいの校舎の5階の教室の奥にいるの見えない?」

「全然見えないけど…っていうか、もう卒業なのにカイ様カイ様って一般人のリディアがカイ様とどうにかなる訳じゃないんだし、そろそろカイ様も卒業してリアルの結婚の事考えたら?」

「別にカイ様とどうとかなるなんて全く思ってないよ、私がカイ様を見たいのは美術品や綺麗な景色を見たいのと同じ事なの」

「まぁ、アクアヴェール王族の血筋の美しさは半端ないからね…それゆえにライマーレに連れて行かれてるけど」

アクアヴェールの王族はライマーレに王族を連れて行かれても強く出られないのは圧倒的国力の差だ。

ライマーレが現在人口80万人に対してアクアヴェールの人口は8万人のかなり小さな国だ。

悔しいけれどライマーレの怒りを買って戦争でも起こされると、絶対適うわけがない。

親交国である火のフォースを持つ王族が治めるアヴァンカルド王国からかなり支援してもらったり、女性の王族はライマーレへ嫁ぐと酷い目に遭わされるようで婚姻の申し出が来る前にアヴァンカルド王国へ嫁いだりとギリギリで対策はしてはいる…

カイ様も美しいからライマーレに狙われたらどうしよう。

「ところで、リディアは卒業後は勿論ご実家の花屋のお仕事に就くのよね?」

「ううん…なんと!お城のお掃除係の使用人として働く事になりました!受かっちゃった!」

「え…?受かっちゃった!じゃないよ!え!?お掃除係って国で一番お給料少ないじゃない!やる気があれば誰でも受かるんだよ?この学校出てそれはありえない!親御さんはなんて言ってるの?」

「うちはもう兄が跡継ぎでバリバリやってるから私は元気に健康に暮らしてたらそれでいいって」


一見自由にさせてもらえてるみたいに見えるけれど、実際は女だから最終的に家にとって利益になる結婚を大人しくすれさえすればそれで良いって思われているから私はただそれだけの存在だ。

私はこの学校に頑張って入った理由はカイ様だけど、両親からすればこの学校を出ていれば良いところに嫁がせられる程度にしか思っていない。

「そうなんだ…まぁ、リディアのお家がそれでいいなら良いのかな…?しかし、リディアのカイ様熱すごいよね。美しいのはわかるけど、私は王子3兄弟だったら長男のアーサー様の方が良いなぁ。男らしいし、学校の成績はいつもトップの首席で剣術の腕もすごいし将来国王になる事も確定してて格好良くない?」

「私はカイ様以外はどうでもいいのー」

カイ様は三兄弟の次男で、何でも出来る長男アーサー様。三男のブライアン様も成績はいつも首席で馬と女性の扱いがとても上手らしく女性人気は一番高い。
そんなお二人に対してカイ様はこれといって目立った事はないから大体三人の中ではーという話ではみんなアーサー様やブライアン様の話で盛り上がる。

< 2 / 54 >

この作品をシェア

pagetop