水の国の王子様は従者を溺愛中!


とにかく、学校を卒業後自由にお城で働く事が出来てよかった。
そして、お城での使用人生活が始まった。


「本日より城の清掃員として配属になった者だ。挨拶を」

「はい、本日よりお世話になりますリディア・ヴァリスと申します。宜しくお願い致します」


頭を下げて顔を上げると、そこは推定平均年齢60代以上…?
でも、みんな拍手で温かく迎えてくれる。


「あらあら、随分と若くて可愛い子が入ってきたわねぇ」

「仕事はここにいる者と分担して教えてもらうように」


すごく適当…!?


紹介が終わるとおば様達が集まってきて、色々お話をしてくれたりお菓子をくれたり和気あいあいとした雰囲気だ。


「それじゃあ、リディアちゃんは私と城内のトイレ掃除に回りましょうね」

「はい!」


城内って王族がたくさんいるのかと思ったけど、結構閑散としてる…


「ほとんどお会いする事はないけれど、城内で王族の方をお見掛けしたら必ず立ち止まってお辞儀とご挨拶してね」

「はい……ちなみにほとんどお会いする事ないというのは、そのくらいの頻度でしょうか?」

「そうねぇ、年に1回くらいかしら?」

「え!?年に1回!?」


学校の時ですらほとんど拝めなかったけど、王族の方が住んでいるお城で年に一回しかお会いする機会がないって…


「王族の方は王族関係者しか入れないあちら側の建物にいらっしゃるからねぇ、数年前はもう少し王族の方の行き来はあったけど最近…ほら、最近ライマーレの王族の方が我が物顔でここまで入ってくるから…」


話をしながら城内を歩いていると、王族関係者しか入れない建物へ続く扉が開いて、数人の人が出てきて私達は急いで立ち止まって頭を下げた。


「カイ様、噴水の管理の頻度は下げても問題ございませんので出歩く事はお控えください」

「あの噴水が国民の水源の要になっているのに管理の頻度を下げて良いことないだろ?」


カイ様……?
私は頭を下げながらもなんとかお姿を見ようとすると、カイ様のお姿を近くで見る事が出来た。


「ああ、そこのお二人頭を上げていただいて構いませんよ。いつも城の清掃ありがとう」

「ありがとうございます。勿体ないお言葉です」


顔を上げると、カイ様は私達の方をしっかり見てくれて微笑んでくれる。

わぁ!!こんなに近くでカイ様を見られたのは子供の頃以来だ……嬉し過ぎて気を失いそう……。

「……ん?あぁ、君リディアじゃないか?」

「ンへ!?」

突然カイ様に声を掛けられ驚き過ぎて変な声を出してしまった。

「ほら、子供の頃に噴水の前で話した事があるんだけど…覚えてないかな?」

「とっ…とても覚えております!!」

「それは良かった」

「まさか子供の頃でしたのに覚えて頂けていて光栄です…!」

「ふふっ、僕は人の顔覚えるの得意だからね」


得意げにそう言うカイ様が愛し過ぎる……っていうか、会話してるなんて。


「もう少し話したいところだけど、今は時間なくてこれで失礼するよ。また話せる機会がある事を楽しみにしてる」

「わわわ私もです!お声掛け頂き身に余る思いです」


カイ様はふっと笑って手を振って立ち去って言った。

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