水の国の王子様は従者を溺愛中!


「やだ!リディアちゃん、カイ王子様からお声掛けてもらえるなんて!」

「ど、どうしよう!もう生涯これ以上に良いことないかもしれません!」

「そんな事ないわよっ!まだ若いんだからこれからまだ沢山…リディアちゃん!鼻血!」

「えええっ」

カイ様とお話しただけで鼻血を出すだなんて……
すぐに処置をしてもらって何とか鼻血を止めてトイレ掃除に戻る事になった。


「ご迷惑お掛けしてすいません…」

「いいのよーっ!王族の方美しいものね!それじゃあ、ここでは私は女性用のお手洗い掃除するからリディアちゃんは男性用お願いね!今の時間来賓のお客様ほとんどいないから」


カイ様に大興奮してしまって恥ずかしい…


来賓用の男性用トイレに入ると、個室が一つ塞がっていて中から苦しんでいるような声が聞こえる。


「……ハァッ……ゃッ……」


あれ?女の人……?


コンコンッ


「失礼致します……お体の具合大丈夫でしょうか?必要であればお医者様手配致しますが…」

「チッ…」


バンッ!


舌打ちの様な音が聞こえると勢いよく個室の扉が開いた。
そして出てきたのは金色の瞳をした怖そうな男性……

「お、若い女か。なかなか可愛い顔してんな?王族か?」

「え…?ち、違います…」

その人の視線は私の顔から下に下がる。

「チッ…ノーフォースの上にただの使用人かよ!邪魔だ!どけ!」


ドンッと押されて、その人はズンズンとトイレから出て行った。


何なの!?服装からして王族か貴族っぽいけど、あの顔つきはぜーったいアクアヴェールの人じゃない。


「ヒックッ…」


さっきの人が出てきた個室から女性の泣き声が聞こえて急いで中を見ると、ドレスを着たとても美しい女性が乱れた格好で泣き崩れている。


「大丈夫ですか!?ひどい!今の人…!」


急いでさっきの男を追い掛けようとすると、その女性に腕を掴まれて止められる。


「ヒグッ…問題ございません……任意です……」


そう言うと女性は泣きながら走ってトイレから飛び出して行ってしまった。


「ちょっ!おまちください!」


任意……?あんなに泣いてて?
今の女性は風貌からアクアヴェールの王族だ。

「リディアちゃん?何かあったのー?」

「あの、今…」

今起きた事を説明すると、ため息をついた。

「はぁ……たまにあるのよ…その男性の目の色金色じゃなかった?」

「はい、まさに金色でした」

「その瞳の色はライマーレの王族の方よ。アクアヴェールの王族が国を守る為にライマーレに逆らえないのをわかっていて、ライマーレの王族が物色しにくるの…国王様もアヴァンカルド王国と話し合ってはいるみたいだけど、ライマーレの兵力の方が圧倒的だからどちらも下手に動けないみたいね」

話には聞いたことあるけれど…通りで王族の方々はあっちの建物から出てこないわけだ。


カイ様が襲われたりしないか心配…


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