水の国の王子様は従者を溺愛中!
「……悪い……こんな事カイにくらいしか話せなかったからつい…」
「いや、ダニエルも大変なのにごめん。あのさ…一つの意見として聞いて欲しい。あんな惨劇を犯したライマーレと交友関係になれとは言わない。ライマーレへ水の提供を約束にお互い手を出さないという協定を結ぶというのはどうだろう…」
俺はダニエルの隣りに移動しながらそう言った。
すると、ダニエルの頬涙が伝った。
「ふはッ……」
ダニエルは涙を流しているのに、何故か笑った。
「ごめんっ…俺なんかが大国のアヴァンカルドの国の事に口出しして…今なんて一般人なのに」
「いや…違うんだ…カイは根っからの平和主義なんだなと思って。アクアヴェールがあんな事になって小さい頃から良くしてくれた人達を惨殺されて…自分の恨みの気持ちだけで戦争とか考えて…カイは渦中の人間で俺よりも辛い思いしたはずなのにしっかり全体を見れているのに…自分が恥ずかしいよ」
鼻を啜りながら涙声でそう言うダニエルの背中をポンポンと撫でてやる。
「実は水不足になったライマーレを見てきたんだ…自国がもたらした災いの被害を目の当たりにしたからそう思えるようになったのかもしれない…」
「は!?ライマーレに行ったのか!?そんな危険な事するなよ!あんな中から奇跡的に生き残ったっつーのに!」
「こんな吹雪の中誰も連れずに一人で駆けつけてくる国王様に言われないないよ…町で会った時一切顔見せなかったのに何で俺だって分かったの?」
「何でって言われるとなんでだろうな?顔見なくても姿見た瞬間にカイだと思ったんだよな…隠してたみたいだったからしばらく様子見るつもりだったけど、兵から報告受けている間に二人は出発してしまったから急いで追い掛けてきたんだ…ここで行かなかったら一生カイに会えないと思って」
「そっか…追いかけて来てくれてありがとう…ダニエルに会えて嬉しいよ…来てくれなかったら危なかった」
「…なぁ、カイ。どうしても城には来てくれないか?一緒にもう一度水の国を再建しよう。勿論、彼女も一緒に」
俺はダニエルの問い掛けに首を振った。
「俺のこと必要としてくれてありがとう…でもごめん…俺はもう一般人のカイルだ。水のフォースも滅んだという事にして欲しい」
そう言って頭を下げた。
「……分かった。カイがそうすると決めたなら無理に連れて行ったりはしないよ…ただ、国王と一般人になっても今まで通り友達でいて欲しい」
「国王様が宜しければ光栄です」
そう言っていつもと同じ様に笑い合う。
ダニエルが国王になってから会う機会は減ったけど、こうやって冗談を言い合って楽しかった時の事を思い出す。
「ははッ…ローティシアに行くんだったよな?早々行けないけどお忍びで会いに行くよ」
「それまでにもてなせるくらいの生活にしておく」
「さてと、火の力もまぁまぁ使って疲れたな…そろそろ休むか」
「あぁ、そうだな」
「ここは何にも残ってないな。布類は全部雪で濡れているし、裸で床で雑魚寝なんてサバイバル術の実習の時ですらなかったよな」
俺はリディアが横になっている場所へ移動して、リディアを抱き寄せてリディアの身体を隠しながら応える。
「でも外より断然良いよ、ダニエルが点けてくれた火も暖かいし…改めて来てくれてありがとう」
「それなら、俺からも生きててくれてありがとな」
「ふ…あ、助けに来てくれたのは感謝してるけど絶対こっち向くなよ?リディアの身体見たら絶交だからな」
「分かった分かった、ちゃんと反対向いてるから安心しろって。カイって恋人にはそんな感じだったんだな」
今までそういう感情が全く無かったという事は無かったけど、気になる子が出来ても将来的に結ばれる事は無いから踏み込まないようにしていた。でも踏み込んだ時、こんなにも愛しくて夢中になれるなんて…
「…自分でも知らなかったよ」
俺は笑いながらそう言った。
「そういう人に出会えて良かったな…大切にしろよ。おやすみ」
「うん…おやすみ、ダニエル」
リディアともう少しくっつきたくて身体を引き寄せる時にリディアが寝ているフリをしていたことに気付いた。
俺がダニエルと色々話してたから起きるタイミングを逃したのだろう。
リディアのそんな行動さえも愛しい…
「……おやすみ、リディア」
寝ているフリを続けているリディアにキスをして耳元で小さい声で囁いた。