betrayal~元彼御曹司との不倫~
一度だけ、私が大阪に転勤になる前に、中村春馬と二人で話した。
それは昔によく二人で来ていて、再会してから一度一緒に飲んだバーで。

「美怜さんは、偽装結婚だって言ってましたけど。
本当は、中村部長の方は美怜さんの事を好きだったんじゃないんですか?」

気になっていた事を、訊いてみる。

「実は、そうなんだよ」

あっさりと、認めた。

「俺、昔から美怜が好きで。
て言っても、高校入ってからだけど、美怜を好きになったの。
だから、美怜を好きになったのは、親友の彼女になってからなんだよ。
今まで十和子以外にそれを打ち明けた事はない」

「なんだか、辛いですね?」

「まあ…。
それなりには俺も彼女居た事もあったけど、いまいち本気になれなくて。
だから、美怜以外の他の女と結婚する気がなくて。
婚約して偽装でもいつか美怜と結婚出来るなら、俺はそれでいいって思ってたんだけど…。けど」

「けど?」

「十和子と出会って、凄い十和子を好きになって…。
今さら婚約を破棄したいとか、美怜や周りにもなかなか言い出せなくて。
ほんの少し、俺も美怜みたいに結婚は偽装だと割り切って十和子を愛人にする事を考えなくもなかったけど…。
十和子にそれを押し付けるのも、って。
どうするか悩んでる間に俺に関する噂が社内に流れて、
それを知った十和子にこっぴどくフラれて。
あの時は、凄い落ち込んだな」

「バチが当たったんじゃないですか?
親友の彼女に横恋慕したりして」

「そうなのかな?
美怜とは俺が一方的に思ってただけで、一切何もないし。
式の時の誓いのキスだって、ほっぺだし。
そんなに悪い事してる、俺?」

「悪い事してるんじゃないですか?
善人のふりして、美怜さんの弱味につけこんで、婚約して、籍入れて。
それって、あなたの恋心を知らない美怜さんとその彼氏でもある親友に対する裏切りだと思います」

そう言うと、中村春馬はそれが可笑しかったのか笑っている。

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