18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

 何よりも、想い人の前でこんな醜態をさらすことになったのだ。

 最悪な気分だ。

 ボールが直撃した額に焼けるような痛みがあり、手で触ると血がついた。


「大変、手当てしなきゃ!」

 焦ってそう言ういろはに、伊吹は淡々と答える。


「平気。これくらい放っておけば治る」

「細菌が入ったら大変だよ。ちゃんと消毒しないと!」

「平気だって」

 少し強い口調になった。

 これ以上恥ずかしいところを彼女に見られたくないと思った。


「伊吹くん、保健室に行こう」

「え?」

 予想外のことが起こった。

 いろはが、伊吹の手を握って引っ張ったのである。


 伊吹は驚愕しつつも手を引かれるまま、彼女について行く。

 彼の頭の中は喜びと戸惑いでパニックになっていた。


「あっ、ごめんなさい!」

 いろはは手を握っていることに気づいたのか、すぐに放して謝罪した。

 伊吹は落胆したが、その反面安堵した面もあった。

 これ以上手を繋いでいたら羞恥のあまり気絶しそうだったからだ。


「ごめんね。えっと、傷は痛くない?」

 訊かれて伊吹は大丈夫だと答えたかったが、恥ずかしさのあまり俯いたまま、ただ頷くだけだった。


 
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