18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

 いろはがシャワーを浴びているあいだ、遥は書斎で電話をかけた。

 たった1回の着信で、相手は応答した。


「……絢」

 と彼は控えめな声で相手の名を呼んだ。

 すると、相手からはやや攻撃的な口調で返答があった。


『ねえ、ハル。さっき僕のこと無視したよね?』

 遥は目を細めて嘆息する。


「すまない。電話に出られなかった」

『うそだね。どうせ、いろはちゃんに知られたくなかったんだろ』

 絢は電話の向こうで笑いながら続ける。


『ねえ、ハル。次の週末、久しぶりに僕の部屋に来ない?』

 遥は呆れたような表情で嘆息する。


「俺の部屋だ」

『あ、そーだったね。でもさ、一応家賃払ってるよね』

「3ヵ月以上踏み倒してる奴に言われたくないね」

『いやーだって、ハルは催促してこないからさあ。いつまで僕を無償で置いてくれるのかなあって思って試してみた』

「いい加減に出ていけ」

『えー? そういうこと言っちゃう?』

 遥が返答せずに黙ると、向こうから大きなため息が聞こえてきた。


『ハルって変わったよね。前はそんなに感情を表に出す奴じゃなかったのに、いろはちゃんのせいで』

 絢は最後のセリフの部分をやや強調して言った。


「絢、前にも言ったが、もう余計なことはしなくていい」

『冷たいなー。今までハルのことずーっと応援してきたのに』

「ああ、ありがとう。だが、相応の対価は払ったはずだ。これ以上何を望む?」


 絢はしばらく沈黙し、質問の答えではなく、別のことを口にした。


『ねえ、知ってる? いろはちゃんを狙っている男の子がいるってこと』


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