18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
「じゃあ、今日はここまでにしようか」
遥がそう言うと、いろははあまり嬉しそうな顔をしなかった。
いつもなら「やった、終わったー」と声をあげるのに。
「あのね、あと1問、この問題を解いてからでもいい?」
なんと彼女はやる気に満ちている。
「いいよ」
と遥は笑顔で答えた。
すると、突如スマホの着信音が聞こえた。
「遥さんじゃない?」
と彼女に言われて、遥はズボンのポケットに手を突っ込んだ。
スマホを取り出してみると、画面に『長門絢貴』という名前が表示されていて、彼はとっさに彼女から見えないようにした。
それから着信を切ってしまうと再びポケットに収めた。
「出なくてもいいの?」
不安げに訊ねる彼女に、遥は笑顔で答える。
「知らない番号だった。さあ、続けて」
「うん」
それから、いろはの勉強が終わるまで彼は黙ってとなりにいた。
もう教えることはほとんどなかったので、彼女の勉強ではなく、彼女自身を見ていた。
冷静に、静かに見守った。
しかし、頭の中ではさまざまなイタズラを思い浮かべては自制するのに必死だった。
「終わったよ、遥さん」
問題が解けたことにすっきりしたのか、晴れやかな表情の彼女に、遥はただにっこりと笑顔を向けた。
「よく頑張ったね。テストは大丈夫だと思うよ」
「ありがとう。遥さんのおかげだよ」
穏やかな空気が流れる中、彼は胸中でひそかに呟いた。
(あー……耐えるの、つらい……)