18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

 車から降りると加賀さんが迎えてくれた。

 私は彼女の姿を見ただけで、それまでの緊張が吹っ飛んでしまうほど安堵した。

 加賀さんがいてくれるなら、ちょっと安心。


「あけまして、おめでとうございます」

 広い玄関にお手伝いさんが数人、その中心に遥さんの両親がいて、にこやかな笑顔で迎えてくれた。


「あけましておめでとう。いろはちゃん、元気そうで何よりだ」

「ようこそ。よくいらしてくれたわ」

 お会いするのはお見合いの日以来だけど、おじさまも美景さんもとても感じのいい人たちでほっとした。

 だけど、つい私は周囲を見わたしてしまう。

 もういないはずのあの方の存在を、探してしまう癖がついているからだ。


「いろは、鬼はもういないよ」

 となりで遥さんにぼそりと言われて、私はびくっと肩が揺れた。


「う、うん……知ってる」

 そう。本家には恐ろしい鬼と呼ばれるお方が、昔いたのだ。

 秋月清十郎というとっても厳しい人で遥さんのおじいさん。

 家族以外の人にも容赦なく怒鳴る怖い人。


 私は一度彼に酷く怒鳴りつけられて、それ以来私たち家族は疎遠になってしまった。

 私が小学生の頃のことだ。


 清十郎さんはその後亡くなったけれど、私にとってはあまりにも強烈な思い出で、それがトラウマになっている。

 遥さんの話だとあの頃は病気で伏せっていて、昔よりは丸くなっていたようだけど、それでもめちゃくちゃ怖かった。


「大丈夫」

 と遥さんがぽんと頭を撫でてくれた。

 それが私の恐怖心をほぐしてくれた。


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