18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
遥さんがもし家族3人で暮らしていたら、違う未来もあったのかなと思ったりする。
あの家に縛りつけられたりしなければ、もっと親子でたくさん楽しい時間が過ごせたんじゃないかって。
そんなことを思うのは、私が恵まれた家庭で育ったからかもしれないから、迂闊に彼にそんなことは言えないけれど。
その代わり、これからそれを実行することはできる。
「ねえ、近い将来こうやって3人でたい焼き食べようね」
私がそう言うと、遥さんは少し驚いた顔をして、それから微笑んだ。
いつもみたいなイタズラっぽい笑みではなく、優しく切ない笑顔だ。
「ああ、そうしよう」
遥さんはそう言って、少し私から視線をそらした。
「わかっていたんだよ。母親が少しおかしくなっていることくらい。それでも、あの監獄のような家の中で、母親だけが救いだった」
ああ、遥さんはやっぱり、お母さんのことが好きなんだなって思った。
「家を捨てるなんて本気じゃなかったんだよね。お母さんとの約束、守るつもりだったんだね」
私がそう言うと彼は苦笑した。
「今は正直、どちらでもいい。いろはがいれば、他には何もいらない。それは本当」
彼は私の手に触れて、今度はまっすぐ目を合わせて言った。
「君と出会えなかったら、俺はどうなっていたかわからない。心が荒んで、この世のすべてを憎んで生きていたかもしれない」
そんな彼の切なそうな顔を見て、胸の奥がぎゅっと痛くなった。