【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい
給湯室に半身を滑り込ませ、賢人さんは私にしか見えないように眉を下げる。
「はい。ありがとうございます」
「変なことされたら遠慮なく叫べよ」
眉間に皴を寄せ冗談とも本気ともつかないことを言うと、彼はミーティングルームへ足を向けた。
ひとりになった給湯室で人知れずため息が落ちる。
池崎さんは頭の回転が速いうえにわざと空気を読まないところがあるから、言葉を選んでしまう私にとっては厄介な相手だ。テンポよく切り込まれると対応できず、結局賢人さんや真凛に日々助けられている。
もう一度、大きなため息をついた。
「ちゃんと自分で断れるようにしなきゃ」
子供じゃないんだから、いつまでの恋人や友人の庇護下にいるわけにはいかない。彼らだって忙しいのだ。私自身がもっとしっかりしなければ。
そう思っていたのに、その日の帰り、池崎さんとエレベーターに乗り合わせてしまった。
「おつかれ」
『閉』ボタンを押そうとしたところで駆け込んできた池崎さんは急いでいるのか息を切らしている。営業部の彼は外出先から直帰することが多いから、この時間に帰宅が重なることは珍しかった。
「おつかれさまです」