【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい



「こっち見ないでください」

「なにを今さら……」

 呆れた声を出しつつ、先に湯舟に浸かった賢人さんは夜空に目を向けてくれている。その隙に身体に巻き付けたバスタオルを外し、お湯に入って彼の隣に腰を下ろした。

「んー、気持ちいい」

 お団子ヘアにまとめた髪を濡らさないように気を付けながら、首までお湯に沈んでみる。

 目の前にあるはずの紅葉は暗闇に溶けて跡形もないけれど、ほんの少し目線を上げれば星のきらめきが目に入った。

 静かだ。湯舟に注がれるお湯の音と、風に揺れる木々のざわめきしか聞こえない。

 ヒノキの香りが優しく漂い、目をつぶると大自然の真ん中でお湯に浸かっているような気分になった。

「最高だな」

 お湯が揺れる音に混じって、賢人さんの声が夜空に溶ける。

「本当に、最高です」

 頬にあたる空気の冷たさも体を芯から温める温泉とあいまって心地いい。五感すべてで露天温泉を堪能していると、隣から視線を感じた。

 振り向いた途端、視界に微笑みが咲く。

「和花、ありがとう。好きだよ」

 優しい声に、ぱん、と心臓が弾けた。
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