【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい
低い声がぽつりと言う。「でも」と躊躇している私の気持ちを軽くするみたいに、賢人さんは優しい笑みを浮かべた。
「急用かもしれないよ」
「はい……」
彼の言葉に甘えてその場で電話をかけ直す。
恋人の目の前で元カレに連絡するという状況はさすがに気まずかった。
昴が私に急用なんてあるだろうか。
せっかくの旅行気分を壊されたこともあいまって若干の腹立たしさを感じていると、一コール目で繋がった。
「昴? 今――」
「和花、助けて」
聞こえた声が弱々しくてぎょっとする。
「え、どうしたの」
「熱が出て、動けない。頼れる人がいなくて……」
「熱って、何度?」
「わからない、体温計がない。でも頭がグラグラする。和花、お願いだ。助けて」
「む、無理だよ、行けない」
「頼むよ……」
「無理だってば、ちょ、昴」
しんどそうな声が途切れ、ツーツーという不通音が耳に残る。沈黙したスマホを凝視したまま青ざめていると、傍らから心配そうな声が落ちた。
「具合悪いって?」