【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい
顔を上げると真剣な表情が目に入る。ほんの少し眉を下げ、愛しい恋人が私を見ている。とりあえず状況を説明するつもりで口を開いた。
「熱があるみたいで。こっちに戻ってきたばっかりで、頼れる人がいないらしくて」
そこまで言ってから、慌てて言葉を続けた。
「でも、私には関係ないので」
内心を隠すように口角を無理やり上げる。私をじっと見下ろして、彼は静かに口を開いた。
「いいよ。行ってくるといい」
怒るでも笑うでもなく、真面目な表情のまま賢人さんは続ける。
「君がとんでもないお人よしだってことくらい、わかってるよ」
ズキリと胸に痛みが走った。
突き放されたような気がして、急いで首を振る。
「行かないです。賢人さんと帰ります」
訴えかけるように言うと、彼はため息をついた。
「そんな泣きそうな顔で言われても」
苦笑を漏らし、端正な顔をわずかに綻ばせる。
「責めてるわけじゃないんだ。ここであいつのところに行かなくたって、和花は結局心の片隅であいつを心配するだろ。だったら行った方がいい。君の心に一点でも陰りがある状態は、俺としても好ましくない」
「でも……せっかく賢人さんと一緒にいられるのに」
私の引き絞るような声に、彼は「ああ」と表情を崩した。
「言葉足らずだった。もちろん、君をひとりで行かせるわけないだろ」