【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい
 会話を止めた男性ふたりが同時に振り返る。

 熱で苦しそうだった元カレは、冷却シートのおかげかさっきよりは顔色がいい。

「昴、これ食べて。私たちはもう帰るから」

「え、もうちょっと居てよ。冴島サンは帰っていいけど」

 立ち上がろうとする昴を制し、私は決意がちゃんと伝わるようにはっきり首を振った。

「帰るよ。あと、もうここには来ない。ゆっくり寝てしっかり治して。仕事、これから忙しくなるんでしょ」

 まっすぐ見つめると、昴はどことなく傷ついたように凛々しい眉を下げた。それでも、私がここに留まる理由にはならない。

「それじゃあ、お大事にね」

「和花……」

 賢人さんを促してベッドルームを後にする。玄関で靴を履いていたら、ガタンと音を立てて元カレがふらつきながら廊下に出てきた。

 私を見る顔は悲痛そうに歪んでいる。

「和花、俺――」

 言いかけて声を詰まらせる彼に、笑いかける。四年前の、社会人のツラさや責任をなにひとつ知らない大学生の時みたいな、純粋な気持ちで。

「昴、今までありがとう。でももう心配しないで。私は大丈夫だから」
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