【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい
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立木が植わったマンションの敷地を抜けて駅までの通りを歩く。振り仰ぐと冴えわたった空に淡い光をまとった月が浮かんでいた。
十一月下旬。剝き出しの頬や指先に触れる空気は冷たい。
夜はもうコートを着ないと冷えるな。
歩きながら去年のことを考えていたら、隣で歩幅を合わせてくれていた賢人さんがぽつりとつぶやいた。
「一年て、あっという間だな」
等間隔に並んだ外灯が、賢人さんのくっきりした顔に陰影を落とす。その彫りの深い顔を見上げながら、まただ、と思った。
きっと今、彼は私と同じことを考えている。
去年の十二月。ただの上司と部下だった私たちの関係に変化をもたらしたクリスマスの日。あれからもうすぐ一年が経つ。
「さっき、なんだかカッコよかったよ。和花、この一年でちょっと逞しくなったかな」
「逞しい、ですか?」
力こぶを作ろうとしてみたけれど、服の上からでは一切変化がなかった。もちろん鍛えてないので力こぶ自体が出現しない。
「悪い、言い方が変だったな。強くなったというか、なんというか」