【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい
疲れ切った心が、これ以上考えすぎてはいけない、と脳に指令を送っているのかもしれない。
「クリスマスは、このあいだの彼氏と飯でも行くの?」
気を利かせたそぶりで小声になった池崎さんに、私は一瞬ぽかんとする。
それから、いつか彼氏のフリをしてくれた昴の顔が思い出された。
そういえば、池崎さんは誤解してるんだったっけ。
「いえ、このあいだのあの人は彼氏じゃないんです」
「……えっ!」
言葉を咀嚼するように瞬きをした後、先輩は目を丸めた。そのまま怪訝そうに眉根を寄せる。
「どういうこと?」
「大学生のときに付き合ってた人なんですけど、あのときたまたま出くわして、ノリで彼氏のフリをしたというか」
「え、ノリ!?」
「すみません、うまく説明できてなくて。あ、江田部長」
透明になっているミーティングルームの調光ガラス越しに上長が手招きしてる姿が目に入り、瞬時に脳が仕事モードに切り替わる。
「それじゃ、失礼します」
「え、ちょ、小松ちゃん!」
池崎さんの声を背中に聞きながら、私は荷物を持ってミーティングルームを後にした。