【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい

 …

 アパートの古びた階段を上り三〇三号室のドアにカギを差し込む。

 入り口脇のスイッチを押すと、真っ暗だった部屋が息を吹き返したように明るくなった。

 同棲を断られたあの日から、なんとなく賢人さんのマンションにいづらくなり、自宅に戻ってきたのが二週間前。

 最初は引き留められたけれど、年末に向けて少しずつ大掃除をしたいからと嘘の理由を話すと、納得してくれた。

 こんなに静かだったっけ。

 冷え切った空間で薬缶にお湯を沸かしながら、ため息をつく。

 ワンルームの狭い部屋だし、ひとりでいても寂しいと思ったことはなかったのに。

 つかの間のふたり暮らしがどれだけ温かくて楽しい時間だったか、胸を吹き抜ける隙間風がまざまざと突き付けてくる。

 ヒーターの電源を入れ、テレビをつけても、心は温まらなかった。

 十二月に入ってから、賢人さんとは会社以外で会えていない。

 お互いに仕事が忙しいのもあるけれど、賢人さんはさらに取引先との会食や忘年会が詰まっていて、平日にできなかった仕事を土日にやっているのだ。

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