お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
「母さん……」

「守人、勇運……。さっきは、ごめんね。大きい声を出しちゃって……」



床に両手をついて、今にも蹲りそうな母さん。そんな母さんの背中に、兄貴がそっと手を置いた。


「一人で背負わなくても良いんだよ、母さん」

「っ!」



親父の事故の真相を、母さんだけが知っていた。

単独事故ではないと知り、飛び出した子供を庇うためだったと知り……無念だったはずだ。だけど、ずっと隠し続けた。俺と兄貴に、自分と同じ「無念」を抱かせないために。



「俺たちは家族なんだから。良い事も、悪い事も、全部まかせ合おうよ」

「守人……っ」


「ね、勇運。勇運もそう思うでしょ?」

「……」



何も答えない俺を、泣きながら見る母さん。「はぁ」とため息をはいて、握った拳をゆっくり解いた。
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