お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する






「好きって……」



寝耳に水の発言に、しばらく思考が停止した。

そして数秒経って、真剣なままの顔の勇運くんを見て――やっぱり聞き間違いじゃなかったって。そう思ったら……涙が出た。

だって、そうでしょ?

勇運くんは、勇運くんは――



「勇運くんの過去……聞いちゃったの。救急車の中で」

「……そっか」

「子供が、苦手なんだよね」

「…………そうだ」



そうだ、と言った時の勇運くんは、罰が悪そうな顔をした。切れ長の瞳に収まる黒目が、僅かに細くなる。



「私の弟は保育園に通ってる。まだ子供だよ。きっと……勇運くんを苦しめる。それなのに……

”私のそばにいる”なんて、言っちゃダメだよ」

「……」



勇運くんは何も言わない。ただ黙って、私を見つめ返した。
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