愛毒が溶けたら


昨日――

あの廃墟の中で見た勇運くんは、本当に顔色が悪くて。すごく調子が悪そうに見えた。

その原因が夏海だと分かって……勇運くんに謝りたかった。夏海を勇運くんの元に向かわせたのは、紛れもない私だから。



――よし、夏海。あのお兄ちゃんの所がゴールだよ!いくよ~



勇運くんは子供が嫌いと知っていながら、夏海を走らせた。

自分のピンチを察してもらうために、勇運くんを頼った。あれほど調子が悪くなる勇運くんを、自分勝手に利用した。



「私は、勇運くんに申し訳なくて……謝りたかった」


それなのに”そばで守らせて”なんて。


「勇運くん、優し過ぎるよ……っ」



シーツをギュッと握って、目の高さまで引っ張りあげる。

この前から、勇運くんの前で泣いてばかり。



――冬音は弱くない



あの廃墟の中、勇運くんが言ってくれた言葉を、私自身がかき消しているようで。それも申し訳なくて「ごめんね」と謝る。
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