愛毒が溶けたら


「生きてた……っ」



こうやって、私と目を合わすことが出来ている。動いている。少しだけ触れた手は、勇運くんの体温をしっかり感じ取っていた。



「勇運くん、勇運くん……っ」



このがれきの中から、私が勇運くんを助けてあげることは出来ない。

それでも、こうやって勇運くんのそばにいる事は出来る。それは勇運くんにとって、意味のないことかもしれない。

逆に、逆鱗に触れるかも……と思っていたら、やっぱり怒号が飛んできた。



「ふ、ゆね……お前、バカか! 何してんだ、早く戻れ!」

「い、嫌だ……っ」

「ワガママ言うな! 死にたいのかよ!」



真剣に、私を怒っているのが分かる。
真剣に、私を想っているのが分かる。

でも、勇運くん。


私だって、真剣なんだよ。

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