愛毒が溶けたら



「……待ってる」



あの日、家族を守りたいと。その一心で警察官を目指した、僕の安直な気持ちではなく。

僕みたいな心の弱い警察官を見て、それでも「警察官になりたい」と。そう言ってくれる、この子の未来を信じたい。



「夏海くんが大きくなって警察官になった時、一緒に働けることを楽しみにしてる。だから、待ってるよ」

「う、うんッ!」



小さな頭の上で何度か手を往復させると、夏海くんは顔をほころばせた。「へへー!」と、なぜだか誇らしげで。



「……ふふッ」



その姿を見ると、どうしてか。僕まで嬉しくて、笑ってしまったんだ。



「おまわりさん、なんで笑ってるの?」

「うん。こんな可愛い後輩が出来るなら大歓迎だな、てねっ」



夏海くんは訳が分からずに首を傾げた。

だけど、どうやら一線を越えることは出来たらしいと安堵した冬音ちゃんは、涙を浮かべながら、僕たちのことを見守ってくれていた。

そして、人知れず心配していた、僕の弟も。
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