お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する

「おい、いい大人がなに泣いてんだよ」

「……な、泣いてない」



ねぇ父さん。

やっぱり、勇運には一生教えてやらない。

僕と父さんだけの、内緒の話ってことにしていいかな?



「ちょっとだけ窓を開けるね」

「おい。病人に風邪を引かす気かよ」

「すぐ閉めるってば」



泣き顔を見られたことが気に食わなくて、しかめっ面で窓を開けた。

すると、十二月だというのに。

温かな風が、ふわりと中へ入って来て……


サラッ


僕の頭をひと撫でした後、静かに消えた。



それは、まるで父さんが、あの日みたいに僕の頭を撫でてくれたようで。

今もなお、あの優しい目で、温かく見守ってくれているようで。



――いいよ。名前の話は二人の秘密だ



って。

僕に向かって、そうほほ笑んでくれた気がした。




*守人*end


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