一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 去年の五月の終わりに生まれた息子は、早いもので一才と三ヶ月になった。
 歩き出すのが早く、じっとしていない元気いっぱいな子だ。何故か自分にも、そして彼にも似ていない髪は柔らかな猫っ毛で色も明るい。事情を知らない人には、不思議なくらい樹と親子と間違えられてしまう。自分にもあまり似ている部分が少なく、本当に自分のお腹から出てきたのだろうかと考えてしまうことがある。けれど口元だけは彼に似ている。時々そう思っていた。

 顔を見てから名前を考えようと決めていて、その顔を見て浮かんだのが、"灯す希望"で灯希だった。お見舞いに来てくれた樹と眞央にそれを伝えると、二人ともいい名前だと褒めてくれた。

「たっちゃん、本当に灯希のことお願いしていいの? 私、まだ時間大丈夫だよ?」
「任せとけって。保育園の送り迎えの練習はしただろ?」

 灯希は二週間ほど前から、入園する保育園の慣らしをしていた。自分の勤務時間はまだ短時間で、9時半から16時半まで。一人でも送り迎えは問題ないが、何かあった時のためにと、今はフリーランスとなり時間の融通がきく樹と眞央も、一緒に慣らし保育に付き合ってくれた。

「じゃあ……行ってくるね。お迎えは私行くから」
「おう! 今日の夜は、眞央が就職祝いにご馳走作るって張り切ってるからな。楽しみにしとけな」
「うん。ありがとう!」

 そんな風に見送られ、また新たな一歩を踏み出していた。
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