一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 とにかく、ゆっくりはしていられない。一緒に朝を迎えたい、なんてきっと言葉のあやで、真に受けてはいけない。それに最初から、終電になろうと帰ろうと思っていた。

 着ていたベージュのシンプルなワンピースを脱ぎ、可愛いとは程遠い機能性重視の下着を取り去る。メイクしたままのほうがいいか悩んだが、歩いたぶん汗をかき、もうヨレヨレだ。メイクをしたところでそう変わり映えのしない、年齢より幼く見えるこの顔。いまさら幻滅されることもないはずだ。そう考えて、備え付けてあったアメニティを手に取ると浴室に入った。

 少し温めのシャワーで汗を流すと髪を洗う。短いと、こういうとき早くていい。そのあと顔と体を洗い、あっという間に浴室を出た。

(そういえば……。何着たらいいの?)

 体と髪を拭きながら、こんなときどうすれば正解なんだろうと手を止める。
 着ていたものをもう一度着直すのもなんだかおかしい気がする。

(バスタオルを巻き付けただけ……とか?)

 困惑していると、洗面台の隅にさっきはなかったものが置かれていることに気がついた。それを手に取ると、掲げるように広げてみた。
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